2014年4月9日水曜日

「悩む」ということ

先日、ある講義を聞かせてもらい、そこで講師の方から「悩むことはするな、楽しいことだけをやれ」というようなお話を聞きました。
とても説得力のある、講師の方の体験からにじみ出たお話でした。

一方でボクは、先月の性同一性障害を取り上げた自分の「セクシュアリティ勉強会」で、「みんなもっと悩んだほうがいい」というような真反対のことを参加者のみなさんにメッセージとして伝えました。

それは、講義に反論したということではなく、「悩む」ということについて、自分のなかでよく考察したうえで伝えたものです。

もちろん、「楽しい」の真髄が捉えられていれば、「楽しい」ことだけやっていればいいと思います。
楽しい」ことに迷いがないのであれば、それでことがうまく運ぶだろうし、わざわざネガティヴに無理やり入り込む必要はないと思います。

ボクが言いたかったのは、「楽しい」ことだけやっていてもうまくいかなかったり、迷っているときに、直感で楽しくなさそうなことから逃げていつも良くない結果ばかりになる場合は、その「迷い」にしっかり向き合ったほうがいいと思うということです。

直感がいつも当たる人は壁にぶつかることはないでしょう。
いつも壁にぶち当たる人は、まず間違いなく無意識に何か違うものが隠れている、とボクが確信しているのです。

そこで、今回、また懲りもせず、「悩む」ということについて辞書で調べてみました(笑)。

〘自五〙
①いたみ苦しむ。病む。源氏物語賢木「例ならず時々―・ませ給へば」。天草本平家物語「中宮御懐妊あつて、もつてのほか―・ませられたによつて」。「神経痛に―・む」
②苦しむ。こまる。思いわずらう。万葉集15「安けくもなく―・みきて」。「恋に―・む」
③とやかく非難する。栄華物語花山「安からぬことに世の人―・み申して」
④(他の動詞の連用形に付いて)…に難儀する。…しかねる。源氏物語槿「石間の水は行き―・み」。「若手がのび―・む」
〘他四〙
①苦しめる。なやます。好色五人女4「暮方の障子をひらき、身を―・みおはしけるを」
②取り扱う。いじる。浄瑠璃、鎌倉三代記「手荒う―・むな、つい破われるぞ」

【岩波書店 広辞苑 第六版 DVD-ROM版】

ここでは、①の意味も含んでいるけれど、主に②の部分だと思います。
これだけ読むと、あまり「悩む」ということは良くないことのように感じます。

ちなみに「迷う」についても調べてみました。

〘自五〙
布の織目がゆるんで薄くなり、糸が片寄るのが原義。転じて、ものごとの整理がつかなくなる意。後に「まどう(惑)」と混同。
①布の糸が乱れて片寄る。万葉集14「風の音との遠きわぎもが着せし衣袂のくだり―・ひ来にけり」
②ものがもつれからむ。乱れる。源氏物語総角「髪はけづることもし給はで、程へぬれど―・ふ筋なくうちやられて」。源氏物語玉鬘「まかで参る車多く―・ふ」
③あちこちへ移り動く。入り乱れる。源氏物語野分「風さわぎ村雲―・ふ夕にも忘るる間なく忘られぬ君」
④道が分からなくてうろうろする。源氏物語須磨「いづかたの雲路に我も―・ひなむ月の見るらむこともはづかし」。「山で―・った」
⑤入りまじって見分けがつかなくなる。まぎれる。新古今和歌集秋「霜を待つ籬の菊の宵の間におき―・ふ色は山の端の月」
⑥心が定まらず、途方にくれる。決断がにぶる。心がぐらつく。源氏物語東屋「しめゆひし小萩がうへも―・はぬにいかなる露にうつる下葉ぞ」。狂言、布施無経ふせないきょう「愚僧は―・うた」。「身のふりかたに―・う」
⑦死人の霊が妄執もうしゅうのために成仏できない。謡曲、八島「―・ひけるぞや、生死しょうじの海山を離れやらで帰る八島の恨めしや」
⑧誘惑されて、判断力を失う。「女に―・う」「金に―・う」
⑨(「まどう(償)」との混同によって)償う。弁償する。旧宝幢院文書「各買ひ―・はせ、還付せしめ」

【岩波書店 広辞苑 第六版 DVD-ROM版】

ついでに、「」という文字の成り立ちについても調べてみました。

「悩」という文字は、「心」を表すりっしんべん(『心臓』の象形)と、「髪」と「乳児の頭蓋骨(『あたま』をあらわす)」をあらわすつくりでできた形声文字です。
つまり、心や頭をあらわすものという成り立ちです。

【漢字の成り立ち辞典】

文字の成り立ちについてだけ見れば、「悩む」ことは何も悪いことではないように思います。

悩む」ということは、何かふたつ(もしくはふたつ以上)の選択肢があって、どちらを選択するかに「迷い」があるから「悩む」のだと思います。

ふたつ以上の選択肢があり、すぐ最善のものを選べるのであれば、何も悩まないでしょう。
何か行動を選択しようとするとき、「行動したい」自分と「行動できない」自分が葛藤していると「迷い」が生じ、「悩む」ことになります。
行動したい」と思うのに「行動できない」ときは、「行動できない」理由が存在します。
また、「行動したい」ということは「行動できていない」自分が存在するから、「行動したい」と思うと思うのです。
このとき、「行動できていない」自分にダメ出しをし、「行動できない」自分にも無意識でダメ出ししているから、自己否定感でいっぱいになるので、「行動できる」わけがありません。
そして、いつまでたっても行動できずに、その一歩を踏み出せない自分にまたダメ出しをし続けるわけです。
このネガティヴスパイラルから抜け出さない限り、「行動できない」とボクは思ってます。

行動できない」自分になってしまったことには必ずなにかの理由があります。
それは、社会の圧力かも知れないし、理解されない状況かも知れないし、なにかのトラウマ経験があるかも知れないし、なにかのおかしな思い込みがあるかも知れません。

行動できない」自分をただの状態だと受け止め、自分にダメ出しをしないようになって、自己肯定感を上げていかない限り、いくら小手先のモチベーションを上げる方法をやってみたところで「行動できる」ようにはならないと思っています。
たとえ、一時的に行動できたとしても、根本の解決ができていなければ、一時的な対処療法にすぎず、また同じ失敗を繰り返すことは目に見えていると思います。
必ず抵抗が出てきます。

その見ないようにしている蓋があるとすれば、そこにちゃんと向き合い、自分にダメ出しをせず、次の行動を選択できる自分に変わっていかないと成長はありません。

向き合えない状況にあるときは、一時的にそのネガティヴな感情をそらしたり、一旦そのままにしておくことは必要かもしれません。

そのあたりをボクは自分の講座で伝えていきたいと思っています。

みんな、必要なときは、とことん悩みましょう。

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